web「美術趣味」にて工房集が紹介されました
共同印刷株式会社が運営する「美術趣味」というブログにて工房集について紹介していただきました!
先日、ご来場いただいたき、展覧会のことだけでなく、その背景も含めて素晴らしい内容にまとめてくださいました。ありがとうございます。
ぜひ多くの方にご覧いただけますと幸いです。
ブログの詳細はこちらをご覧ください。
http://bijutsu-shumi.com/
また、ブログからテキストを引用させていただきますので、こちらもご覧ください。
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「工房集」というアートに関わる施設があることを最近知りました。ここは普通のギャラリーとは大きく異なります。知的障がいのある方が作品を制作するアトリエであり、それらを展示公開するギャラリーでもあります。休日も鑑賞できる展示会が開催されていたので、初めて訪れてみることにしました。
ほとんど予備知識のないまま来てみて、まず建物前庭の空間が放つクリエイティブマインドに、高レベルのプロの力を感じました。オブジェっぽい掲示ディスプレイや楽しくペイントされた地面や板のフェンスなどが効果的に配置され、施設に向けた人々の情熱が感じられて、何故か嬉しくなりました。しかし、あらかじめ展示会開催の知識がないと、ぶらりと入っていいかどうか躊躇してしまいます。でもそろりと入ってみると快く歓迎され安心しました。
入ってすぐ右に白い壁のギャラリー空間があり、たくさんの作品が展示されていました。
そのギャラリー空間だけでなく、奥に続く廊下の壁や天井、飲食できるカフェの空間全部に、ドローイングをはじめ、織物やCG表現など、多様な作品が掲出されていました。それぞれ作者の写真と本人の特徴が記されており、ほのぼのとした気持ちにさせてくれます。
作品はもちろんすべて秀逸なものというわけではなく、稚拙な殴り書きに見えるものも含まれます。しかしいくつもの作品は、何度もそしてじっくり見ていたくなります。はっとする色彩の表現やタッチが見られること、思いもつかない言葉の表現、それが故意のものではなく純粋に、造形を愉しむ帰結や痕跡であることが、気持ちを惹き付ける大きな要因なのかなと思いました。そして、それはその人の呼吸や生きてきた痕跡に関わること、さらにその表現を行うまでに長い葛藤を要したであろう背景などを含めて、大きく見れば生命力が発露したように感じてしまう・・・アーティストがコンセプチュアルに構築したアート表現では成し得ない表現を体感しているという印象です。ただし、この建物外観を見たときに感じた、この施設に力を入れる人々、職員の方々の導きがあって初めて生まれ得た世界なのだと推測します。
この日は「大宮太陽の家」という施設のメンバーによる展示会でしたが、工房集の母体となっているのは、「みぬま福祉会」という社会福祉法人で、「川口太陽の家」をはじめとする埼玉県南部の22の施設を運営し、300人を超える利用者がいるとのことです。その中で130人ほどが「表現活動」に関わり、多岐にわたるアート表現を仕事として実践しているということなのです。労働の成果として作品はグッズとなって販売されたり、企業とのコラボでデザイン化されたりしています。
企業の下請け的な軽作業やお菓子作りという仕事の枠にとどまらず、それを行うのが困難な重度の知的障がい者にもその人にしかできない表現手段がある。それを仕事にするという発想から数々の素晴らしい作品を発信する工房が誕生することとなったということですが、その背後には、本人、職員、家族の、簡単な言葉で片付けられない根気の積み重ねがあってのことと思います。
帰り際には、施設の「仲間」の方が「ありがとうございました。」と丁寧に挨拶してくれ、気持ちをほっとさせてくれました。あらためて、表現に不可欠な人との関係性、さり気ない日常表現の蓄積の大切さ、そして生の営みとアートの結びつきについて想い起こし、考える契機を得たひとときでした。